生産要素と生産関数#
単一財の生産者理論の章では費用関数がわかっているもとでの企業の行動を分析した.この章では,この費用関数がどのようにつくられるのかについて考察する.
企業の活動#
まず(初歩的な)経済学における企業行動について復習しよう. 企業は「利潤」を最大にするように行動する.1 利潤とは売上金額から費用を引いたものである.
ではこの利潤を最大化するために企業が選べるものはなんだろうか.企業が供給しようとする商品の種類,生産量(どれだけ作るか) , 商品の価格,従業員の採用数, 事業のための投資・研究開発 その他諸々,決めるべきことは色々ある.これを最初から全て分析するのは不可能なのでまず単純なケースに限定してやってみよう.そのために以下を仮定する.
a. 商品は決まっている(1種類だけつくる) (種類も 1 つだけ)
b. 技術も決まっている (生産性の改善とかもナシ)
c. 価格も自分で変えられない (価格受容者の仮定)
d. 選べるのは①どれだけ作るか,②どれだけ人を雇うか,③どれだけ機械を導入するか…
単一財の生産者理論の章では,費用関数を前提として,利潤最大化をする生産量を求めた.この章ではまず,その費用関数というものについて,より詳しく考えてみよう.
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企業が本当に利潤を最大化するのか,については色々研究がなされている.実際,利潤ではなく売上を最大にした方が実際利潤は良くなるなどの結果が知られている.戦略的委任の研究などがその一例である.これは簡単に言えば,売上最大を目的にした社長の方が,利潤最大を目的とする社長よりも利潤を高くできることがあるというものである.詳しくは,産業組織論の教科書(例えば,丸山「経営の経済学 第3版」などを参照のこと)