複数財市場の市場均衡#
一般均衡理論とは#
前章まで学んできたのは消費者個人の問題である.すなわち与えられた価格と所得をもとにどの財をどれだけ消費するかという問題である.
この章で学んでいくのはその価格や所得がどのように決まるかという問題だ.これは単一財市場のケースでは需要曲線と供給曲線の交点で決まると学習してきた. では財は複数種類、少なくとも二種類はある今回のようなケースではどうやって市場の取引や価格を考えればよいのだろうか.
基本的な発想は財が1種類のときと同じである.価格は世の中の欲しい量と世の中の売りたい量が一致するように決まる. 欲しい量とは需要量のことで、売りたい量とは供給量のことである.
財が1種類のときと異なる点は財が複数種類ある点であるので、それぞれの種類の財の需要量と供給量が一致しなくてはならない.つまりは財\(x\)の需要量は財\(x\)の供給量と一致しなければならないし、財\(y\)の需要量も財\(y\)の供給量と一致しなければならない.
注意点は、前章で学んだように財\(x\)の価格が財\(y\)の価格に影響するかもしれないということである. 単一財の需給を分析する部分均衡分析では複数種類ある財と財の間の相互関係を無視していた. 一方で、前章で学んだように財同士には代替関係や補完関係といった相互作用が働くことがある. つまりある財の市場の動向は他の財市場の動向に影響する. 例えばバイオ燃料技術の発達によるトウモロコシの需要の増加は他の穀物の需要にも影響する.
このように財の相互関係まで考えて、市場同士の影響を分析する手法を 一般均衡分析 という. 一般均衡分析の目的は次の二点である.ひとつは市場の相互作用のメカニズムを解明し、一般均衡効果の影響の規模などを調べること. もうひとつは経済全体の市場均衡が効率的かどうかを問うことである.
実際に計算例を出してみよう. 財\(x\)と財\(y\)の需要関数がそれぞれ次の式で表されているとしよう.(単純化のため所得の部分は無視する)
一方財\(x\)と財\(y\)の供給関数も次のとおりであるとする
このとき、一般均衡価格と取引量を求める. 条件は次のとおりである.
この方程式を解くことで一般均衡価格\(p_x,p_y\)を求めることができる.その価格を需要関数(あるいは供給関数)に代入すれば一般均衡における取引量を計算することができる.
一般には、一般均衡分析は複雑になるため、(パラメータを推定しつつ)コンピューターなどを使って数値的に解くことが多い. このような分野は応用一般均衡(AGE)や計算可能一般均衡(CGE)と呼ばれる. 政府の政策の効果を推定したり、試算を行うのに使われている.