消費者の問題#

ミクロ経済学における登場人物の行動原理は 選択可能なものの中からもっとも効用が高くなるものを選ぶということである.選択可能でなければそもそも選べないし、効用が低いものをわざわざ選ぶとは考えられないからだ.

価格理論においては選ぶものはそれぞれの種類の財の消費量の組み合わせである. 次の例を考えてみよう.

  • 《昼食のメニュー》

ひとことに昼食メニューの選択と言っても様々な選択肢がある.ちょっと気の利いたお店だとご飯の量を好きに選ぶことができるし、色々なおかずを組み合わせることができる.ただし、好きなメニューを好きなだけというわけには行かない.我々は日々の予算を超えて昼食代に費やすことはできない.予算内でどの食品をどれだけ選ぶかがここでの問題である1

  • 《働く時間と休む時間(労働と余暇)》

労働時間を選ぶことも消費者の問題のひとつである.働くのは疲れるので嫌だが、全く働かなければ給与が出ないので余暇を楽しむことができない.労働(お金)と余暇のトレードオフ2がここに発生している.どれだけ働くか、そしてどれだけ余暇を取るかがここでの問題である.

  • 《今日の消費と明日以降の消費(貯蓄問題)》

毎日の消費にどれだけの予算を費やすか、というものも典型的な消費者の問題である.今日だけで将来獲得できるであろうすべての所得を使いきってしまうことは可能かもしれないがおそらく望ましくない. また今日一億円手に入ったとしても今日だけで使いきることはおそらくほとんどありえない.たいていの人は一部を貯蓄に回すだろう.いくら貯蓄すべきかは将来どれだけの消費を予定しているかによって決まる.一生を通じて生涯獲得できる所得の中で毎日いくら消費するかを決めることがここでの問題である.

このようにあらゆる選択問題は制約に直面している.そしてそのほとんどは価格理論で考える予算制約というものである. 価格理論における消費者の行動原理は予算制約を満たす消費財の中から効用がもっとも高くなる組み合わせを選ぶということである.次節以降は効用・消費・予算制約などについて細かく見ていくことにする.


1

別の制約、例えばカロリー制限という制約もあるかもしれないが.

2

あちらが立てばこちらが立たぬ、くらいの意味.